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2012年04月19日

上岡陽江・大嶋栄子『その後の不自由-「嵐」のあとを生き・・』

上岡陽江・大嶋栄子『その後の不自由-「嵐」のあとを生きる人たち』医学書院、2010年。

松本俊彦先生(精神医学)による紹介。月刊「みすず」2012年1・2月合併号 
p.78から抜粋。
本書の題名にある「嵐」とは、女性の薬物依存症者の多くが体験している、
様々な暴力と緊張に満ちた子ども時代のことであり、同時に、薬物や
摂食障害、あるいは自傷行為といったアディクション--女性の薬物
依存者には摂食障害と自傷行為が伴うのはお約束である--行動に
満ちた人生の一時期のことでもある。そして本書は、「嵐」を生き延び、
様々なアディクションを手放してもなお、生き続けるために抱えなければ
ならない様々な不自由を見事に描き出している。
 だが、本書を女性の薬物依存症者支援に関する本としてだけ読む
のは、あまりにもったいないと思う。むしろ本書は、「境界性パーソナリティ障害」
とラベリングされ、援助者から忌み嫌われている一群の女性に対する、
新しい理解の枠組みと支援のあり方を提示する一冊と考えるべきである。
 本書のすごさは、境界性パーソナリティ障害を語るための新しい言葉を
創造している点にある。従来用いられてきた、「自他境界不明瞭」「衝動的」
「操作的」「気分易変」とかといった、当事者にとっては救いにも慰めにも
ならない否定的な言葉を、本書では、「普通の人とつきあうと健全な距離が「寂しい」」
「すぐに「ニコイチ」の関係を求めてしまう」「突然ひらくどこでもドア」
「アクセル踏みっぱなしの感覚」などといった、平易な日常語で置き換えている。
いずれも著者らが白兵戦的な地域の援助実践に汗するなかで獲得した
言葉、そして当事者と共有できる言葉である。

 本書の著者のひとりである上岡は、薬物依存症と摂食障害の当事者であり、
この20年あまり、薬物依存症を抱える女性の地域支援に奔走してきた援助者
である。本書を読むことで、アディクション問題の支援とは、決してアルコールや
薬物といった化学物質、すなわち「モノ」をやめさせることではなく、「ヒト」が
地域で普通に生活できるようにすることこそが目標である、ということを
確認することができるはずだ。
  


Posted by 伝兵衛 at 16:11Comments(0)薬物依存症