2012年01月09日
ライファーズ(終身刑受刑者)償いと回復の道標10(その一)
坂上 香(さかがみ かおり)津田塾大 准教授、映画監督。
月刊「みすず」2011年12月号 p.54~65から抜粋。本文は買って
読んでください。315円。今年この連載は本になると思います。
本が出たら買ってください
報復、排除、刑罰に取り愚かれた文化には、抑圧と恐れを
乗り越えた社会の在り方を想像する余裕がない。 アリス・ド・パジェ
新しく選んだ道がまた自分に合っていなければ、まごまごしないで
もう一度方向転換をする。それでいいのだ。 マヤ・アンジェロウ
東京都小菅、東京拘置所。今もなお、死刑執行が行われている
場所だ。償いと回復の旅を語るうえで外せない。
私自身、ここを面会で訪れるようになってから18年が経つ。
月刊「みすず」2011年12月号 p.54~65から抜粋。本文は買って
読んでください。315円。今年この連載は本になると思います。
本が出たら買ってください
報復、排除、刑罰に取り愚かれた文化には、抑圧と恐れを
乗り越えた社会の在り方を想像する余裕がない。 アリス・ド・パジェ
新しく選んだ道がまた自分に合っていなければ、まごまごしないで
もう一度方向転換をする。それでいいのだ。 マヤ・アンジェロウ
東京都小菅、東京拘置所。今もなお、死刑執行が行われている
場所だ。償いと回復の旅を語るうえで外せない。
私自身、ここを面会で訪れるようになってから18年が経つ。
日本最大のこの施設には、百名近くの死刑囚がいる。
私はその一人のA君に面会するために、今もここを訪れている。
当時19歳という少年のA君は事件を起こした。
事件の内容は陰惨だった。被害者のなかには四歳の女の子もいた。
2001年にA君の死刑は確定した。現在、直系の親族と弁護士の
他に、面会を許可されているのが私を入れて四名。
面会は「安否確認」が目的だから 刑務官は 話しの内容に
よっては 差し控えるように促す。
文通も、基本的には面会が許可されている者のみが対象で、
それ以外の人に宛てられていると返送されたり、黒く塗りつぶ
されてしまったりする。A君からの手紙も、九行分、真っ黒に塗り
つぶされて送られてきたことがあった。後で判明したのだが、
それは、彼が五歳になる私の息子にメッセージを書いて
きた部分だった。
黒塗りの九行は、彼の精一杯の感謝の表現だったはずだ。
五歳の子どもに気持ちを表明せずにはおられないほど心が
動かされていたのではなかったか。十数年彼を知る者としては、
大きな変化の一つだ。更生プログラムどころか、人との接触が
これほどまでに極端に制限されていても、豊かな感情を、
会ったこともない人と通いあわせたり、人として成長し続ける
ことが可能なのだ。黒塗りの九行はその証だと思う。
実は、償いと回復をめぐる旅のなかで、私は彼の存在を常に
強く意識してきた。映画「ライファーズ 終身刑を超えて」の
製作中も、映画の舞台となった刑務所内TC(治療共同体、
回復共同体)プログラムの「アミティ」や、主人公であるライファーズ
(無期刑、終身刑受刑者)を、A君がどう受け止めるだろうかと
問い続けた。彼らもかつては手に負えないほど暴力的で、
A君同様、人を殺した経験がある。TCを通して自らに向き
合ってきた彼らの姿は、A君にとっても回復や償いについて
考えるきっかけになるだろうか。ひょっとしたら、TCや修復的
司法に関心を持つかもしれない。どうしたら、それらを実現する
ことができるだろうか。いつか、どうにかして残された被害者や
その遺族との「修復」の場を持つことはできないだろうか。
(続く)
私はその一人のA君に面会するために、今もここを訪れている。
当時19歳という少年のA君は事件を起こした。
事件の内容は陰惨だった。被害者のなかには四歳の女の子もいた。
2001年にA君の死刑は確定した。現在、直系の親族と弁護士の
他に、面会を許可されているのが私を入れて四名。
面会は「安否確認」が目的だから 刑務官は 話しの内容に
よっては 差し控えるように促す。
文通も、基本的には面会が許可されている者のみが対象で、
それ以外の人に宛てられていると返送されたり、黒く塗りつぶ
されてしまったりする。A君からの手紙も、九行分、真っ黒に塗り
つぶされて送られてきたことがあった。後で判明したのだが、
それは、彼が五歳になる私の息子にメッセージを書いて
きた部分だった。
黒塗りの九行は、彼の精一杯の感謝の表現だったはずだ。
五歳の子どもに気持ちを表明せずにはおられないほど心が
動かされていたのではなかったか。十数年彼を知る者としては、
大きな変化の一つだ。更生プログラムどころか、人との接触が
これほどまでに極端に制限されていても、豊かな感情を、
会ったこともない人と通いあわせたり、人として成長し続ける
ことが可能なのだ。黒塗りの九行はその証だと思う。
実は、償いと回復をめぐる旅のなかで、私は彼の存在を常に
強く意識してきた。映画「ライファーズ 終身刑を超えて」の
製作中も、映画の舞台となった刑務所内TC(治療共同体、
回復共同体)プログラムの「アミティ」や、主人公であるライファーズ
(無期刑、終身刑受刑者)を、A君がどう受け止めるだろうかと
問い続けた。彼らもかつては手に負えないほど暴力的で、
A君同様、人を殺した経験がある。TCを通して自らに向き
合ってきた彼らの姿は、A君にとっても回復や償いについて
考えるきっかけになるだろうか。ひょっとしたら、TCや修復的
司法に関心を持つかもしれない。どうしたら、それらを実現する
ことができるだろうか。いつか、どうにかして残された被害者や
その遺族との「修復」の場を持つことはできないだろうか。
(続く)
Posted by 伝兵衛 at 13:25│Comments(0)
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