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2013年01月02日

自死の少ない町にて―徳島県旧海部町を歩く

自死の少ない町にて―徳島県旧海部町を歩く
森川すいめい(精神科医.一陽会陽和病院.共著「現代思想 
特集 大震災は終わらない」(2012年3月号))
月刊「みすず」2012年12月号p6~15.から抜粋:
勝手に抜粋してはアカンのですが と言うて 抄録のような
のをカキコミしても 当事者や家族のなかで この「みすず」
という雑誌を取り寄せる方は稀だと思いますので 抜粋します。
この組は 自助グループです。
学生さん等は ぜひ買って読んでください。315円。
そして下記の岡先生の論文も 図書館で読んでください。

 慶応義塾大学大学院の岡檀・山内慶太先生の論文で「朋輩組」
のことを知った。旧海部町(現在の海部郡海陽町の一部)に
400年前からある互助組織で、この組織の存在は人のいのちを
守るという。その論文の調査は、風土が似ている三つの町を
比較して、旧海部町の特徴を浮き彫りにした。私はこの町で、
次の三つに注目した。①コミニュケーション能力、②情報集積
力、③危機介入力。町の人々を通して、この三つが高まる
仕組みに触れた。

★岡檀、山内慶太”自殺希少地域における自殺予防因子の探求~
徳島県旧海部町の住民意識調査から・一”「日本社会精神医学会雑誌、
第20巻3号、213~223p.2011年。★

この町の生き字引きの居られる「みなみ旅館」という宿を
滞在先に選んだ。
岡先生たちの調査結果によると、排他性が少ないこの町は
個人を尊重する。「学歴よりも人物本位」「政権交代が早い」
「右へ倣えを嫌う」といった結果も出ている。

この町は、精神科病院に入院しなくてもいいようになっているという。
それは、個人を尊重することの繰り返しによって、ひとりひとりが
自分のペースで生きられるからと思われた。障がいの重い人を
見守る力が高い町というわけではなく、障がいが問題化しなく
なっている。精神疾患の治療の基本は、薬物治療や精神療法
以上に安心と安全の保障が重要だと言う医師は少なくない。
それをこの町では、当たり前のように実践している。

朋輩組の最大の特徴は、排他性が少ないことだという。日本で
もっとも自死の少ない町の仕組みは、おそらくこれにある。

朋輩組の構成はこうだ。同世代の人たちが、8人から18人くらい
でグループを作って、生涯互助する仕組み。町全体では
何十組かがある。組への出入りは自由、罰則なし、規約なし。
「入っといたら得」な互助組織。話を聞いていく中で朋輩組に
は、三つの力が伸びる仕組みがあると感じた。三つの力とは冒
頭にも述べた①コミュニケーション能力、②情報集積力、③危機
介入力である。町の人全員が組に入っていなくてもいい。この
三つの力を伸ばした人が町に点在するだけでも、町の生き
やすさは高まるだろう。
「親戚に言えないこともある。仲間になら言える。独りで解決でき
ないことがある。仲間で話し合って解決する」
 たとえば、歯茎が痛くなったときに、「祭日だから、待つしか
ない」と言われるのが当たり前かもしれない。しかしこの町では、
解決するためにはどうするかと話し合っている。待つしかない
とはだれも言わなかった。
 職場の会議でも、課題解決をするために話し合うのではなく、
途中から、やらない理由に肉づけをする会議に変わっていく。
やらない理由思考を鍛えているとも言える。
 そう強く感じたのは、同じく今年の春、熊本県明生病院に
行ったときだった。
 明生病院のコンセプトは、「患者を断らない」と聞いた。患者を
断るというのは、自分たちの病院でケアできるかできないかを
選別するという意味である。たとえば精神科領域でのアル
コール依存症者への対応を挙げてみる。アルコールに飲まれて、
家族に暴力をふるい、身体もボロボロの状態の人がいると相談が
あったとき 断ることに慣れている病院は、「うちにはアルコール
のプログラムがないから」と言って断ることができる
(他の専門機関を丁寧に紹介するのは断ることではない)。
ところが明生病院は、断らないことを大切にしていた。
 では、患者を断らない明生病院ではどうしているか。明生病院は
もともと、アルコール治療の専門病棟を持っているわけでは
なかった。集団治療プログラムを実施できるほどの患者数も、
マンパワーもなかった。しかし患者を断らないと決めていた。
そこで生み出されたのが、個人プログラムであった。
 アルコール依存症治療の常識は集団プログラムであるが
(実のところ診療報酬上そうせざるを得ない場合が多い)、
その常識は、課題解決思考の日々の習慣によって打ち破ら
れた。プログラムの大枠はあって、あとは個人個人にあった
プログラムを、その大枠から医療者と一緒に選んで実施して
いく。診療報酬上の課題も解決されていった。「できない理由、
やらない理由」を先に考える習慣ができてしまうと、個人プロ
グラムを作ったらいいという発想は生まれがたい。プログラムが
ないから断ろうと先に考えるからだ。明生病院スタッフの
「何とかしよう」という想いが、個人プログラムを生み出した。

朋輩組は、これと同じだ。仲間が困っているときに、仲間を
助けることしか考えない。組織を維持することに忙しくなって、
問題が起こらないようにと罰則や規約で締めつけることはない。
締めつければ、楽しさも希望も失われていくことを知っている。
旅館の主は、 「人生、いろんなことが起こるのです。それが
当たり前です。だから、何かあったときにみんなで助け合える
ようになっているのです」
と続けて言った。課題を解決するために知らないことは学ぶので、
情報集積力が高まる。
だれかが経験したことが、仲間の中で共通の知識に変わる。
課題が生まれたときにどうしていこうかと話し合うので、次第に
コミュニケーション能力も高まる。
コミュニケーション能力が高まる利点は明らかである。たとえば、
お互いに仲違いするような誤解があったときには、言葉や
行動によって誤解は解決されやすくなるし、調子の悪くなった
ときは、「調子が悪い」と遠慮なく話せるようになる。         
こうして、何かあったときにすぐに助けられるようにもなっている。
すぐに助けられるようになる利点は明らかである。解決しがたい
問題をだれかが抱えていたときに、その悩みを聞く側も、解決
しない問題に一緒に悩むことになるのだが、その相手側も
何度も何度も同じ悩みを聞きつづけてきたとしたら疲弊していく。
東日本大震災の支援で、こころのケア活動のひとつとして、
相談室を開設することになった。当然、相談室にはだれも相談に
来ないのは開設前から明らかだった。
相談に来られるのは相談したら何か解決すると知っている
人たちである。相談してもどうにもならない人たちが、独り
苦しんでいて、その人たちとは相談室では出会えない(こうした
人たちに出会うためのマーケティング戦略が別途あるが、
それはまた別の機会に書いていきたいと思う)。

 つまり、朋輩組は相談することに慣れている人たちが多くなる。
そして、何かあったときに、すぐに解決できるようになっている。
コミュニケーショソ能力が高くなって、情報集積がされていけば、
何か問題が見つかったときにすぐに解決できやすくなる。
知っていることが多いということに加え、知らないことを調べる
力がついている。問題は課題へと置き換えられ、課題は解決
するものだと知っていると、危機介入力がきわめて高くなる
から、安心して人は悩むことができる。

ご興味を持って下さった方には、同先生の論文を蔽んだうえでぜ
ひ実際に町を歩いていただければと思う。
自死の少ない町にて―徳島県旧海部町を歩く
写真 by SACHI
★ブログ管理人の蛇足:
これほど長いカキコミは 何日かに分けて載せれば 明日から
ラクなのですが、読んでいただくには まとまっていた方が
いいと 思って 分割はやめました。


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Posted by 伝兵衛 at 10:33│Comments(0)自助グループ
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