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2011年11月10日

被災地の苦悩とフランクル

石川陽 著、月刊「春秋」2011年11月号、p.1~4.から抜粋:

4月下旬に被災地の病院に入職した。精神科医療期間がない町で
「こころの相談室」を開設して継続的支援を始めた。

フランクルは、人間は単なる生物学的-心理的―社会的存在で
あるだけではなく、精神的(実存的)存在である事を強く喚起する。
しかし現在の精神医学は実存の領域を個人のものとして留保し、
そこに踏み込むことを避ける傾向にあるように思われる。
ではフランクルの示唆を、我々はこの被災地で実際にどの
ように援用できるのか。

ここに記すことは、遺族支援の基本-時間をかけた慎重な
傾聴と寄り添う姿勢、適切な薬物療法など-を十分に踏まえ、
その中でごく部分的に行っているにすぎない。

一つは苦悩に敬意を示すこと……。
 フランクルは「創造価値」「体験価値」の他に、最後まで失われる
ことのない価値実現の可能性として「態度価値」を挙げ、その中で
も「苦悩に耐えること」について述べている。
 「価値実現の第三の可能性は、苦悩すること、つまり耐えること、
運命に耐えることにあります」(「苦悩する人間』119p)
 苦悩は業績である(フランクル)。
 被災された方々の自尊心は著しく低下している。援助を受けざるを
得ないということは屈辱的でもあり、援助-被援助は微妙に上下
関係をもたらす危険が常にある。敬意を示すことは、著しい自尊心の
低下を和らげる為にも基本姿勢といえる。「助けてやる」という
姿勢が絶対的禁忌であることは言うまでもない。
 
 次に、生きる意味を喪失した方に「あなたは私達にとって、
かけがえのない、大切で必要な存在だ」と伝える事である。持ち家と
妻子を……全てを失ったある男性は「生きる意味が全くありません」と
述べ、希死念慮が続いている。彼の自殺を防ぐ為にあらゆる手段を
とっているが、有効な手段は限られており、実存に問いかける必要を
強く感じるのである。具体的には、生き残った彼の母親にとって彼が
最愛の存在であることや、彼には妻子を弔う役割があること、職場の
仲間は彼を大切に思っていることを、精神療法の中で溶ませるので
ある。弔う作業が癒しになるのは、それがその人白身のためではなく、
故人の為にできる唯一の作業であるからだ。行方不明者の家族は
弔う作業ができない為により煩悶が大きい。
 ここでは冒頭に述べたように、「あなたの側から人生に何も期待でき
ない」としても、「人生の側からみるとあなたはかけがえのない
必要な存在なのだ」ということを伝えているのである。
 これこそまさに生きる意味の正体であり、実存の本質である。
絶望からの蘇生にはこの「根源的いのち」の働きが不可であるが、
フランクルの実存的精神療法はこの発露を促すのだ。

人間の本質は苦悩する人間、苦悩人であるということです。」
「苦悩する人間は、まさに真理のすぐ近くにいるのであり、たやすく
真理に気づくのです。」(「苦悩する人間』133p)

繰り返しだが、私は臨床医としては生物学的な理解を何よりも
重視していることを強調したい。 いしかわ・あきら 精神科医。



Posted by 伝兵衛 at 15:57│Comments(0)
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