薬物依存症・性的少数派・少年非行

おそらく、自分を大切にできない者には、他の誰かを
大切にすることはできない。その意味では、セルフ・
エスティーム（自尊心）の感情は良好な人間関係の
基盤であるとも言える。しかし、村松聡の言うように、
たんなる自己への執着や利己心ならば誰にでもあるが
、「自分を正しく愛する」ということは、実は決してたやすい
ことではない。

身に着けるのに訓練を要するものなの
である。それにもかかわらず、これまでの道徳教育に
おいては「自分を正しく愛し、尊重すること」の重要性が
看過されてきた★★。依存症者たちにこうした資質が
欠けている要因は、部分的には、彼らがそうした訓練の
場を与えられてこなかったことに求められるべきであろう。
そこで、家庭生活や教育現場のなかに、そうした訓練の
場を創り出していく必要がある。すでに実験的に試みられ
ている「アサーション・トレーニング」や「子どものための哲学」
（Ｐ４Ｃ）には、そうした役割が期待できるように思われる。
★★村松聡「今の道徳教育に欠けているもの」、加藤尚武・
草原克豪編『「徳」の教育論」芙蓉書房出版、2009年、75－84頁参照